2012年8月30日木曜日

4. 「自分の意見を持てる」授業をどう作るか、ビデオ学習と論述テストの意味は何か


(ア) 「自分の意見を持てる」授業をどう作るか

歴史の授業は「暗記もの」という見方が高校生の常識である。教える側も、自分の意見を持ち、表明できる主権者を育てる授業をめざしていても、実際は講義式の場合が多い。
そこから脱却し、生徒が「自分の意見を持てる」授業に変えるのに必要なことは、次の簡単なことである。
まず自分の意見を書く時間を授業で確保すること、次にその意見をクラス全員で共有することである。生徒が意見を持てる教材を準備し、意見をまとめて知らせることである。生徒の意見をまとめることは、授業への反応がリアルタイムで分かり、教える側にも楽しいことである。

(イ) ビデオ学習が授業を変えることの意味は何か

NHKが放送した番組を教育現場で有効活用してもらうために、ティーチャーズ・ライブラリーを整備しDVDを無料で貸し出している。ビデオ録画や撮影の機材も安価になった。映画やドキュメンタリーのDVD化も進んでいる。ビデオ学習の条件は広がっている。日本と世界の現実と歴史を学び、主権者として生きる知恵が得られるかを基準に、ビデオ教材を選択すること大切である。またビデオ教材の活用方法を工夫することが、授業の質を変えると思う。ビデオ学習を授業で大いに活用したい。

(ウ) 論述テストが授業を変えることの意味は何か

選択問題や穴埋め問題などの暗記中心のテストでは、本当の意味での「自分の意見を持つ」授業はできない。授業を変えるとともに、テストも暗記中心からの脱却を図りたい。
1985年の学習権宣言には次のようにある。
学習権とは、読み書きの権利であり、問い続け、深く考える権利であり、想像し、創造する権利であり、自分自身の世界を読みとり、歴史をつづる権利であり、あらゆる教育の手だてを得る権利であり、個人的・集団的力量を発達させる権利である。
この精神を生かして、「問い続け、深く考える権利」、「歴史をつづる権利」を行使できるテストに変えたい。テストを論述問題に変えることで「自分の意見を持てる」授業を完結させたい。その際、論述問題が初めての生徒が多い場合は、授業で使っている教科書やプリント・ノートなどの持ち込みを認めたり、事前にテストのヒントを示したりする配慮も大切である。また、採点の公平を期すために、答案返却の際には解答例を示したり、異議申し立てを受け付けたりする配慮も大切である。
ビデオ授業と論述テストが相乗作用を発揮して、「自分の意見が持てる」授業ができる。

3. 具体的な授業の例4


(エ) 労働基準法を学ぶ

夏休みはアルバイトをする高校生が多いので、夏休み直前スペシャルとして「絶対トクする!学生バイト術」の授業を行う。ドラマを見ながらクイズに挑戦し、「これだけは知っておきたい」働くルールを学ぶ。

「労働基準監督官 和倉真幸 働く人の味方です!」のドラマで学ぶ

2005年7月15日に金曜エンタテイメントで「労働基準監督官 和倉真幸 働く人の味方です!」のドラマが放映された。このドラマを使って「働くルール」の授業をする。
このドラマを活用して学べるのは次のことである。
a 労働基準法とは何か?
b 労働基準監督官の仕事は何か?
c パートやアルバイトで有給休暇が何日取れるのか?
d 労災保険料は誰が払うか?
e 通勤災害とは何か?
f 解雇は何日前に予告しなければならないか?
g 過労死の認定基準はどのようなものか?
h 「サービス残業」とは何か?
i 時間外・深夜・休日の割増賃金とは何か?
j 名ばかり管理職とは何か?
k 労働災害の報告義務とは何か?
l 「労災隠し」とは何か?
ドラマを3回に分けて見ながら、有給休暇や過労死・割増賃金・労災保険などについて考える学習ができる。学習のポイントとなる大切な場面でビデオを止め、プリントの空欄に記入しながら簡単な解説をすれば理解が深まる。
最後の15分は、プレゼンテーションソフトを使ったりして、プリントの穴埋め問題と3択クイズに挑戦する。3択クイズは、自分が正しいと思ったものに手を上げてもらってから、回答を発表すると印象度が高まる。プリントには感想や質問・意見を書けるようにする。学習後に、全員の感想や質問・意見をまとめたプリントを次回に配布すれば、次の学習の導入に使える。

「オトナへのトビラTV 働く編」を見て学ぶ

2009年4月に『絶対トクする!学生バイト術 クイズに挑戦!「これだけは知っておきたい」働くルール』を出版した。朝日新聞などに「働くルール」の授業とこの本の記事が掲載された。2011年7月25日、NHK(Eテレ)が「オトナへのトビラTV―働く編―」で、「働くルール」の授業を放送し、この本の中のクイズを取り上げた。

「オトナへのトビラTV 働く編」の視聴プリントは次の内容である。このプリントを記入しながらビデオを見る。(実際のプリントの  は空欄)

1. 高校生の求人数は、どのように減っているか?
400通 → 150通 → ?
2. 高校生のバイト先であった嫌な経験は?
1日ただ働き。
店長にセクハラされた。
週3で契約したのに週2しかいてもらえない。
シフトの時間に行ったのに、ずっと待たされて…。
3. Q1 アルバイトの時給(最低賃金)は?
国で決まっている
都道府県で決まっている
特に決まっていない
4. Q2 アルバイトで残業した場合、本来何分単位で計算される?
お店の開店前の準備や、閉店後の後片付けの仕事も労働時間に含まれる。
5. Q3 学生のアルバイトで有給休暇はとれる?
休む理由はテストでも、デートでも大丈夫。
6. バイト先で ひどい目 どうする?
王道でいったら直接言う。店長ビビらせる、「警察に言うよ」的な。
7. 新屋朝貴さんはどうしたか?
日記に何と書いたか:時給700円である、違法が確定した
何を印刷してバイト先に向かったか:労働基準法
思い切って店長に交渉してどうなったか:時給も上げてくれた
次のバイト先で何と言われたか:最初の5日間は見習い期間だから少し安い時給で
8. ブラック企業アナリスト・新田龍さんのブラック企業の見抜き方とは?
社員数に対して求人数が多い時は要注意!
仕事内容があいまいだったり、よく分からない横文字の時は調べてください
ハードルの低さばかりが強調されている時も要注意!
9. ブラック企業とたたかうにはどうしたら良いか?
10. 感想を書いてください。

「アルバイト体験アンケート」結果を見て学ぶ
高校生の多くはアルバイトを体験している。そのアルバイト体験を取りいれた授業を行う。そのために、「アルバイト体験アンケート」を実施する。アンケートでたくさんの違法労働が出てくる。最低賃金より低いバイト料、有給休暇をもらえなかった、1ヵ月分のバイト料がもらえなかった…。

グループで話し合い発表して学ぶ
自分達のアルバイト体験とアンケート結果をもとにグループで話し合い、発表して学びあう。自分の体験だけでなく、みんなの多様な体験の中からおかしいと思った事を共有する事が認識を深めることになる。さらに、違法状態をどのようにすれば克服できるかの対策を考える。

グループ討論で使った「働くルール」を学ぶワークシートは次の内容である。

グループで話し合い黒板に書いて発表(発表者を決める)
クイズ① 休憩時間に仕事場を離れて良いか?
1. 休憩時間中も勤務場所を離れることはできない。
2. 店長などに許可を得れば離れて良い。
3. 自由に使える時間なので許可なく離れて良い。
クイズ② アルバイトをやめる時はどうすればよいと思いますか?
1. 契約期間は絶対やめられない。
2. 2週間前に通告すればやめられる。
3. いつでも自由にやめられる。
グループで話し合う
(意見が出つくしたら、内容を黒板に書く→発表する→質問する)
1. バイトや仕事で(家族や友達に聞いた話、ニュースも)、おかしいと思ったり、困ったことは何ですか?
あなたの意見:
みんなの意見:
2. おかしいと思ったり、困ったことを解決するにはどうしたら良いか?
あなたの意見:
みんなの意見:
4. 店長に文句を言われないで「有給休暇」を取るにはどうしたら良いか?
あなたの意見:
みんなの意見:
5. どんな企業がブラック企業だと思うか?ブラック企業を見抜くにはどうしたら良いか?
あなたの意見:
みんなの意見:
6. バイトや将来働く時に「こうして欲しい」と思うことは何か?労基法などでもっと知りたい事は何か?
あなたの意見:
みんなの意見:
7. 感想

3. 具体的な授業の例3


(ウ) 「枯れ葉剤がベトナムに残したもの」を見る

2005年5月15日、テレビ朝日のザ・スクープスペシャルが放送された。「終戦60年・ベトナム戦争終結30年特別企画 検証!終わりのない戦争 知られざるヒバクシャたち」という90分番組である。その<第1部>「ベトナム戦争終結から30年~枯れ葉剤がベトナムに残したもの~」と、この番組以降、新たに誕生した結合双生児やベトさんの死、ドクさんの結婚の映像を中心に45分程度に編集して視聴する。
「枯れ葉剤が残したもの」の視聴プリントは次の内容である。このプリントを記入しながらビデオを見る。(実際のプリントは空欄あり)

1. 1972年4月25日、ホワイトハウスでどんな会話が行われていたか。
ニクソン大統領:私は核爆弾を使用したい。
2. 報道写真家の中村梧郎さんはホーチミン市のツーズー病院に誰を訪ねたか。
グエン・ドク(24) グエン・ベト(24)
3. ボイロイの森で生まれたタイン・ガーは何が不安だったか。
妊娠した時はとても不安でした。
4. 1961年~71年の間に撒かれた枯れ葉剤の量はどれくらいか。
総量9万kl(4tトラック2万台)。・
5. グエン・バン・フン(当時7)はどうなったか。その娘・ユウ(5)はどんな障害があるか。
脳性麻痺。先天的な言語障害。
6. 枯れ葉剤の撒かれた川の水を飲んだダニエル・ロウニーの娘・ジェニファーはどうなったか。
ジェニファーは先天的に片腕が欠損。
7. 枯れ葉剤の散布を行っていたハンク・シャイブの娘・ブランディーはどうなったか。
顔面の形成不全をともなうトリチャーコリンズ症候群で誕生。
8. 枯れ葉剤が兵器として最初に考案されたのはいつか。どこに使う予定だったか。
第2次世界大戦の初期。11月まで戦争が続いていたら日本に使われていた。
9. ビエンホアではダイオキシンの含有量はどれくらいか。
ナマズ:5ピコグラム
ウナギ:10ピコグラム
アヒル:331ピコグラム
住民:413ピコグラム
10. アメリカ政府は枯れ葉剤と病気との因果関係をどのように考えているか。
ベトナム帰還兵:1993年、ガンなど13種類の病気との因果関係を認定→約12%、37万人に対し補償
ベトナム人被曝者:NY連邦地裁「枯れ葉剤との因果関係は証明されていない」→訴えを棄却
11. チャンティー(24)の結合双生児は何がつながっているか。
2人の肝臓がひとつにつながっています。
12. ドクさんと結婚したいというトゥエンさんの母・ホアさんはどうしたか。
娘の将来が心配で反対しましたが…
13. 感想を書いてください。

2009年12月にベトナムを訪問し、ホーチミン市にあるツーズー病院で枯れ葉剤被害を受けた障害児のいる平和村の子どもたちや結合双生児として生まれたドクさん一家と双子の赤ちゃんと交流した。その映像を時間の許す限り見る。

3. 具体的な授業の例2

(イ) 日本軍「慰安婦」を読む

アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)が『フィールドワーク日本軍「慰安婦」』を出版している。その中の「第2章 日本の侵略と日本軍「慰安婦」制度、第3章 被害女性たちの証言と各国の事情」を紹介し、調べ学習に取り組む。
「学び・調べ・考えよう」と呼びかける本のタイトル通り、調べ学習に最適な内容である。


調べ学習プリント「日本軍『慰安婦』」を読んでは、次の内容である。

1. 日本軍が慰安所を作った理由は何か。




2. 女性たちはどのようにして「慰安婦」にされたか。
日本国内
植民地(朝鮮・台湾)
侵略地・占領地(フィリピン・インドネシア・東ティモール・中国)
3. 慰安所にはどのような規定があったか。
4. 慰安所で朝鮮人女性たちは何を強制されたか。
5. 抵抗した人はどうなったか。
6. 被害女性たちの「証言」を読んで感想を書いてください。
日本軍「慰安婦」の調べ学習で生徒たちはどのような意見を持ったのか紹介する。
知らなかった、とても恥ずかしい
戦争で男は戦っていたけど女はどうしていたのかあまり知らなかった。慰安婦のように強姦されていたのが初めて知って許せないと思った。
私はプリントを読むまで「慰安婦」という人がいたなんて知らなかったです。読んで知らなかった事がとても恥ずかしかったです。
知ることができて良かった
このように被害を受けた人にしか語れない話こそ私たちが知っていなければならない。本当はこんな話ししたくもないし、思い出したくもないと思うけど知ることができて良かった。
考えさせてくれたことに感謝
たくさんの朝鮮の女性たちがすごく悲惨なことをされたと知ってびっくりしました。証言はほんとに生々しくて、恐ろしい文ばかりでした。でもそれが事実なんだと思ったら、読むことをやめられませんでした。これが昔の日本がしたまぎれもない事実だからきちんと受け止めなくてはいけないと思いました。同じ女性として、自分がこんな目にあったらどうなんだろう、とか辛い目にあったのに逃げずに証言してすごいなあとかたくさん考えさせられました。私だったら絶対自殺してしまうと思いました。なのにそれでも生きて、私たちに事実を伝え、こうやって考えさせてくれたことに感謝します。
伝えていく
私も女だし、証言して下さった方々の苦しみが伝わり、本当に心が痛みました。まずこの時代に「慰安婦」というものが作られていたことに驚きました。お金のための日本軍は裏では女性の身も心もボロボロにしていたのは許されえない。二度と起きないよう皆(とくに若者)に伝えていくべき。
間違っている
「慰安婦」があることが間違っている。
裁判で敗れる結果が悲しい
被害を受けた女性たちが日本政府を訴えた裁判で敗れる結果になったことが悲しくもあり虚しい。
過ちは消えない
過去の過ちは今も消えない。
謝罪し続ける
証言をあげてくれた女の人たちは、その後自分たちがどう見られるかという恐ろしさを抱えながら打ち明けてくれたんだろう。同じ女として、しかも同じ年位の人たちがされていたということを見ると、日本軍のやってきたことはあまりにひどい。日本は、反省して許されなくても謝罪し続けるべきである。

日本軍「慰安婦」の存在すら知らない生徒が多い。知らなかったと恥じ、知って良かったと感謝する生徒も多い。「慰安婦」制度自体や、裁判結果、消えない過ちや謝罪についての意見を持つ生徒も少なくない。
授業後、2009年5月に韓国の「ナヌムの家」を訪問して「日本軍『慰安婦』被害ハルモニ孝行フェスティバル」に参加して交流してきた時の写真などを見せる。
戦争の被害の歴史だけでなく、日本軍「慰安婦」をはじめとする戦争の加害の歴史を知ることが本当の戦争の恐ろしさと醜さを知ることになる。国境を越えた戦争被害者に共感する力が、真の国際平和につながる。

3. 具体的な授業の例1

(ア) 「赤い背中~原爆を背負い続けた60年~」を見る

2005年8月9日(火)、「被爆60年企画」としてNHK総合テレビで放映された52分の番組である。1時間の授業で見るために45分程度に短くし意見を書く時間を確保する。
背中を真っ赤に焼かれ、うつ伏せで横たわる60年前の自身のカラー写真を名刺に印刷し、核廃絶を世界に訴え続けている谷口稜曄さん(76歳)。癒えることのない背中の痛みを抱えながら訴え続ける谷口さんの戦後を見つめたビデオは多くの事を教えてくれる。
広島・長崎での被爆の真実を、現在進行形で学ぶことができる。被爆者が何を求めてどのように行動しているのかを学ぶことができる。何より、「何のために歴史を学ぶのか」、「何のために生きるのか」を高校生に強烈に問いかける内容である。
「赤い背中~原爆を背負い続けた60年」は、NHKティーチャーズ・ライブラリーとして、DVDを無料で貸し出されている。ライブラリーには、「原爆の絵~市民が残すヒロシマの記録~」もある。

「赤い背中~原爆を背負い続けた60年」の視聴プリントは次の内容である。このプリントを記入しながらビデオを見る。

1. 谷口稜曄さん(76歳)の妻の栄子さんは何に気をつけているか。それはなぜか。
2. 谷口さんの背中は何ができないか。
3. 谷口さんは何をしていて被爆したか。
4. 被爆した谷口さんは何と叫び続けたか。その闘病生活は何年続いたか。
5. 谷口さんの背中を覆っている瘢痕には何がないか。何ができないか。
6. 長崎で被爆し生き残った人は何人か。谷口さんが被爆体験を語るきっかけは何か。
7. 谷口さんはどのような姿勢で車を運転するか。
8. 新婚旅行で谷口さんの背中を見た栄子さんはどうしたか。
9. 谷口さんがアメリカを訪問したのは何のためか。ニューヨークで何をしたか。
10. 谷口さんの背中に何ができるか。これまでに何回できたか。
11. 感想を書いてください。

3年生は昨年の修学旅行で長崎を訪れ、被爆者の講演を聞いている。話してくれたのが前の時間に見た「長崎の子・映像の記憶~原子雲の下に生きて~」に登場した下平作江さんであった。
彼女がビデオに登場すると、見ていた生徒から「この人知っている」「講演を聞いた」との声が上がる。ある生徒は感想に、「下平さんは修学旅行で自分たちにも原爆の話をしてもらったので、他の学校にも原爆のこと伝えていてとてもすばらしい」と書いている。被爆地への修学旅行と授業が相乗効果を発揮して学習効果が高まった。

「赤い背中」のビデオを見た生徒たちはどのような意見を持ったのか紹介する。
長崎に行き・資料館で見た・聞きたかった
2年生の時に修学旅行で長崎に行きました。原爆資料館を見学しましたが、今日見た写真がありました。その写真を見た時に受けたショックは、ものすごく大きなものでした。
「赤い背中の少年」の写真を原爆資料館で見ました。60年以上経った今でも谷口さんの背中を治せないのがくやしい。
あの写真の人が生きているなんて思っていなかった。放射能が人間の体をここまでダメにするなんて思ってもいなかった。
谷口さんにも長崎へ修学旅行で会って話を聞きたかった。
同世代・リアル・衝撃・ズキズキ
谷口さんは、自分と同世代の時に被爆したので感情移入しやすかった。
赤い背中のカラー写真を見て、一気に原爆がリアルに感じられた。今まで、どこか原爆を空想上のもののように思っていたが、全て現実なんだという事を痛感させられた。
谷口さんの背中の写真を見て、これまで見た中で一番ひどい写真と言ってもおかしくないほどの衝撃を受けた。
谷口さんの背中を見て自分の背中がズキズキした。
あの写真を見て、心を動かされない人はいないと思う。
強い人・感動・体を張っている
自分に何かできないかを考えて行動できる谷口さんは本当に強い人だ。
谷口さんの、自分の体の痛みを押し殺してまで、遠出をして訴え続ける姿に感動。
生きているだけで苦しいのにそれでも生き続けて非原爆のために体を張っている。
支え・夫婦の愛
稜曄さんが今までこうして生きてこれたのは、栄子さんの支えがあったからで、これからも原爆の恐ろしさを未来に伝えて。
栄子さんも毎日谷口さんの背中に薬を塗ったり、料理もちゃんと谷口さんの体重を増やさないように作ったり、この夫婦の愛はすごい。
見て・知って・伝え・語り続ける
谷口さんは今も痛みと戦って生きようとしている。この映像をもっとたくさんの人々に見てもらいたい。
アメリカの人々に少しでも「赤い背中」について知って欲しい。
苦しいはずなのに、原爆の悲劇を若者に伝えていこうとしていて感動。
私達には何ができるのだろう…。そうだとしても若い人に原爆の悲惨さを伝える谷口さんの事を自分は尊敬する。
原爆の本当の恐ろしさを伝えられるのは谷口さんのような被爆した人達だけだと思うので、これからも頑張ってたくさんの人に伝えて欲しい。
谷口さんには長生きして原爆の体験談をこれからも頑張って欲しい。
今まで、原爆でひどいケガを負って生き残った人々の事を、辛い思い、痛い思いをしてかわいそうだという風に思っていました。しかし、実際に被爆した人々はそんな事を感じて、言って欲しくて被爆体験を語り継いでいるのではない事を知りました。これからもし、被爆体験のお話を聞く機会があれば、とらえ方を変えて聞いてみたい。
被爆した人々が多く亡くなっている中、生きている我々若い人の仕事は、被爆した人の話を聞き、後の子どもに伝えることだ。
現実を受けとめ、後に語り続けることが、世界から原爆をなくす第一歩になる。
怒り・罪・責任・反省
原爆を落とされ、被害を受けて苦しんだ人が、60年たった今もなお苦しみ続ける人がいることに驚き、そして原爆に対しての怒りを覚えました。
今も原爆で被爆し苦しんでいる人がいる事をよく知り、アメリカには罪を感じて欲しい。アメリカは一番核兵器を持ってはいけない。
被爆者は原爆を作った人、作らせた人などに強い恨みを誰でも持っており、原爆を作り、落としたアメリカは責任を取るべきだ。
谷口さんのように今も原爆が原因で苦しんでいる人がいるのに、被害を受けていない、加害者側であるアメリカによって核兵器を減らすのも無くすのでできないでいる。アメリカは自己中心的で悪い国だ。原爆を落とした事を反省していないのか。アメリカが変わらないと世界は変わらない気がする。
政府がむごすぎるや子どもには見せられないとか言っているのが信じられない。そのくらい恐ろしい事をやった事を知るべきだ。核兵器を持っている国が持つなと言っても説得力がないのは子どもでも分かる。
NPT・非核化・原爆や核が無くならないのは…
NPTの会議の内容を見ていると原爆の廃止の事よりも相手が原爆を持っているかいないかの内容になっていて、会議に意味がなくなってしまっている。5年に一度という回数も少ない。
核拡散を防止するため、もっと有効な話し合いをして。
原爆や核が無くならないのは、日本が国をあげて反対運動をしないためと、アメリカが自国の安全のために原爆を手放せないためだ。
アメリカが一番先に代表として核を無くせばいい。
もっと日本が非核化に向けて他国を引っ張っていかなければだめ。

多くの意見は、長崎の資料館で見たことと重ね合わせ、被爆者に共感し、原爆投下への責任を問い、非核化に向けた展望と決意を語っている。こうした意見を共有することが、原爆について考える視野を広げ、「非核平和の世界をつくる」(実教出版の教科書 『高校日本史B 新訂版』 P.241)ことにつながる。

2. 授業をどう感じ、どんな意見を持ったか

こうした授業を受けた高校生は、どう感じたのか、どんな意見を持ったのか。犢橋高校の生徒の意見を紹介する。

(ア) ビデオ授業への共感と持込論述テストへの驚き

1. ビデオを見て授業するのは頭の中に残りやすい
2. 授業はビデオが主体なので飽きることなく学習することができました
3. 文章だけじゃわからない、細かいところまで分かってすごい良い
4. ただ、黒板の字を写すだけかと思っていたら、先生の授業はビデオを見て、やる授業なので、普通に授業するより分かりやすかった
5. 今まではビデオを見てそれが授業だった事はなかった…ビデオ学習はいろんな内容があるので(ドラマなど)すごく楽しいです。2学期からもビデオ学習を続けてほしい
6. 授業はプリントで分かりやすいし、ビデオも見るから心に残りやすい…歴史系のビデオはなかなか見ないから面白い
7. 今まで歴史とかそういう系統が嫌いだったけど、教えによって変わるんだなと実感
8. ただ戦いもののビデオじゃなくて、百姓側の気持ちとかも見れたから、真剣に考えながら見れた
9. 初めて受けたような授業…(テストでの持ち込みやDVDやNHK撮影など)他の先生と違うやり方で…とっても分かりやすかった
10. 実写化されているおかげで頭に入るようになったし、覚えやすかった。テレビを見ているような感覚なのに、時間が経っても自然と思いだすことができた
11. ビデオを見ての授業なので自分的にはとても楽…しかもプリントもあるので覚えやすい…テスト中にプリントをみていいなんてすごい
12. たくさんのビデオやDVDを見て、言葉では分からない事を映像から読み取るなど、工夫された授業でとても面白かった…ビデオからプリントを作って、重要な部分を自分達で書いたりなど、すごく勉強に
13. 教科書や資料からは分からない、その時代の農民たちの苦しみ、政府や幕府の行為、そしてそれに対する民衆の強い思いが良く分かりました
14. テスト方式も自分の意見を述べるという将来に必要な能力を身に着けるやり方…百聞は一見にしかずの言葉通り、教室で板書をノートに写すだけの授業なんかよりも、ずっと分り易かった

(イ) 初体験の「考える授業」

15. 生きてきた中で、こんなに戦争のことや、これからの日本について考えた事がありませんでした
16. 目をそむけたくなることばかりでしたが、戦争について考える機会が持てて良かった
17. どうすれば世界が安全で平和に暮らせるんだろうと考えさせられました
18. 事実をありのまま教えてくれて、自分がどう思ったか、この先どう生きるかを再確認させてくれる授業
19. 世界の姿を知った以上、何かできないかと私なりに考えるようになりました。…何も知らずに生きてきたので世界で何が起きているのかもっともっと学びたいと思うようになりました。…自分にできることを見つけることを、私の大学4年間への課題にしたい

(ウ) 本質に迫る授業

20. ただ昔の情勢を知るだけではなく、今の日本と昔の日本の違いや、今の世界情勢の本当の本質に迫ることができた
21. 正直いつ戦争が起きて、いつ終わったのかは知っていたけれど、こんなにむごくて残酷なものだとは知りませんでした
22. 利益がすべてなのはとても悲しい。金持ちは自分の利益のことしか考えていない。利益のために戦争を続けてたり、進めたりするのはとても恐ろしい
23. プリントを読むまで「慰安婦」という人がいたなんて知らなかったです。読んで知らなかった事がとても恥ずかしかった
24. 自分は本当に表面上のことしか知らなくて偏見もしてたからなんだか情けないと毎回思ってた
25. 今までは教科書から習っていた日本の過去も、映像や色々な方の証言によって、美化しすぎていた過去が本当の日本が少しずつわかるようになりました
26. 教科書の本のかしこい強い日本軍とは違って裏の姿を知ってしまった
27. 昔は、韓国や朝鮮の人に、昔のことをいつまで怒っているんだ、関係ねえだろ、と思っていましたが、そうされるだけのことを昔の人たちはしていた、と知りました
28. 今もなお中国との間に壁があり、日本のことを悪く思っていることについて、前まではよくわからなかったが、2学期の授業を受け、その理由がわかり、世界情勢についても学んだ
29. 今まではニュースなどで朝鮮や中国、いろんな国から日本へしてきた事しか知らなく、日本はかわいそうなどと思っていたが、授業で学んだことを考えてみると昔の日本は毒ガスで人を実験に使ったり、強姦したり、人間がするようなことではないことを平気でしていて本当にガッカリ…今でも苦しんでいる人を考えると日本をキライな他の国の人たちがたくさんいる理由が分かった
30. 教科書は本当に真実が書かれているのでしょうか…政府の人々はどう思っているのでしょうか。本当は隠したいんじゃないでしょうか。昔の人の過ちを本当は隠したいんじゃないんでしょうか
31. 憲法はたくさんの時間をかけ、苦労して出来たものだと知りました。憲法は私たちが平和で安全に暮らすためにすごく重要なもの
32. 戦争はただ悪いことだと思っていたのが、戦争で日本が負けたことによる新憲法制定などで日本が変わっていったり、国民を平等に考えるようになった変化をたくさん知ることができた
33. 私は日米安保はアメリカが日本を守ってくれる、とてもいい条約なのかと思ってしました。でも安保に隠された裏の顔、アメリカの策略を知ってゾッとしました。日本はこのままアメリカに利用されているだけではいけないだろう
34. 安保条約のこと。今までも学校で習ったことはあるけれど、それは表向きの条約内容であって、裏で、この条約で悩んだり、苦しんだりしている人が多くいるということを初めて知った。「日本に基地があったら安心」ぐらいの気持ちで考えていたけど、改めて考えてみて、戦争を憲法で否定している日本にここまでの軍備はいらない…この問題について私達も意見を持たなくちゃいけない
35. 自衛隊もイラクの戦争の時に戦場に行かなければならなかったのか、また日本で武器を作ったりしていいのか…私たち若い世代こそ考えなければならない
36. 戦争も水俣病も福島第1原発事故の放射能汚染も、政府や国は最初や今でも本当の事を隠し続けている。隠す事で責任を負わないようにしている
37. 何もしていない人や何も知らない人に被害がいって、それを指示した人たちは何もなく生きている。戦争も、公害も、原発も

(エ) 過去の人々に共感し、今を考える

38. 今も昔も日本の政府、役人はどうしてこう、ちゃんとしてないのか、腹が立ち…上に立つ人間なのだからもっとしっかりして欲しい
39. 今も不景気で大変な世の中だけど、昔、こういう人達がいたから時代は良くなってきたのだ
40. 自由民権運動をあきらめず、最後までたたかった百姓の人達をとても尊敬…今の時代も税金が上がったり、被災地の人達が大変な生活をしている中、政府は何をやってるんだろう…そんな風に思っている人はたくさんいると思うので困民党のように何か行動をとれたらな
41. 私の働いているバイト先の社員はいつ倒れてもおかしくないようなシフトで働いているんでドラマを見た時重ねあう所があり心配に
42. ビデオを見ると現代の私たちの生活と比べてしまう。現代を生きる人の中にも過去に戦争をした人、傷を背負って生きてる人もたくさんいる。その人たちから当時の話を聞き、私たちが平和で暮らせるよう、未来につなげる事が大切
43. 兵士たちを飢え死にさせたり、国民の生活を苦しめたり昔の人たちは戦争に対して力を入れすぎてる…今も日本とかはあんまり国民のことを考えていない
44. 戦争の話を知って自分たちがもう戦争なんて起こさないようにするのが戦争で犠牲になった方たちへの配慮だ
45. 死ぬかもしれないのに、戦争に反対して、戦争を止めようとしてきた人達は本当にすごい人
46. おそらく私があの時代にいても、標耕平達のように反抗するだろう
47. 被害者だけに目を向けないで、加害者の気持ちも知ってみたいと…戦争が終わった後、本当の自分を取り戻した時、加害者の軍人は何を思うんだろう…罪悪感なのか、良い思い出なのか、何も考えない、忘れてしまうのか。被害者の声ももちろん重要だけど、加害者の声を聞くことも、再発防止になる
48. 印象に残っているのは、「慰安婦」…女性の人たちかわいそう。ひどすぎる!自分もこの人達の気持ちになって考えさせられました
49. 自分だったら、辛すぎて死ぬのを選ぶと思うのに、この時がんばって生きた人たちは強い
50. 事実なんだと思ったら、読むことをやめられません…これが昔の日本がしたまぎれもない事実だからきちんと受け止めなくてはいけない…同じ女性として、自分がこんな目にあったらどうなんだろう、とか辛い目にあったのに逃げずに証言してすごいなあとかたくさん考えさせられ…私だったら絶対自殺してしまう…なのにそれでも生きて、私たちに事実を伝え、こうやって考えさせてくれたことに感謝
51. 性暴力を加えるための所を作ったり、兵隊のストレス解消だけに女性をひどい目にあわせた人たちを許せない
52. 失った命に対し反省しなかった政府も軍のトップも憎い
53. 私は沖縄出身で米軍基地を何度も見たことがある。おばあちゃんの家の近くに森でも訓練されていた。飛行機の音も考えられないくらいうるさい。辺野古に移設したって、沖縄にあることは変わらない。沖縄の海を埋めて建設すると聞いて、とてもありえない
54. 今でも別の国では内戦が起きたりしていて、武力以外で問題を解決できる平和な世界はいつ実現されるんだろう

(オ) みんなの意見に共感と刺激

55. 感想のプリントを読んで、共感したり、こんな考えもあるんだと新しい発見があって刺激を受けます
56. テレビの人達が来たときにみんなの意見が聞けたりして良かった
57. TVの取材の時に皆で話し合ったのは楽しかった。皆の意見が聞けてとても勉強になったし、タメになった

(カ) もっと知りたい、知らせたい

58. 私たち日本に住んでいる人全国民が知る必要がある…世界の人々も知る必要がある!日本はこんな経験をした、そして今も苦しんでいる。という事を知ってもらいたい
59. 二度と戦争が起きないためにも日本史の勉強をたくさんし、戦争について知らない人たちに教えていきたい
60. 知らないでこのまま生きるより知ってよかった…今私たちが知らないと戦争で生きてきた人たちが次々と死んでいく中、また同じあやまちを繰り返さないよう考える機会が減っていきます。なのでもっと知りたい
61. 南京大虐殺のことを知らずに生きていくのはダメ…昔、日本が中国人に対してどんなことをやってきたのか知る必要がある
62. 私も含めた若い人たちは知らなくてはならないのに知らないことがたくさんある…昔の日本がやったことを知っておき、そして忘れてはならない。同じ過ちをくりかえしてはならない
63. まだどこかで隠されている事実があると思います。それを次の代の人にちゃんと伝えていかない限りは、また同じことが起こってしまう…無知ほど怖いものはない
64. 授業を受けて、物事を知る度に、知って良かった!という思いと同時に、何も知らなかった自分がとても恥ずかしく思えました…恥ずかしい大人にならないようにもっともっと勉強して、知識を身につけよう
65. 戦争の被害にあった人たちはこれからどんどん少なくなっていって、戦争のことが忘れられていってしまうかも…だから、今、生きている自分たちがこれから生きていく人たちに教えていかなきゃいけない
66. 被害にあった方の文を読んで、思い出したくない過去を勇気を出して、今の私たちに伝えようとしてくれているのには意味がある…この勇気ある行動がなかったら今も日本軍の良いところばっか見て生きていただろうし、こんなに考えなかった
67. 生まれて17年、初めて日本のしてきた過ちの大きさを知った…この事実は今を生きる私たちが知らなければいけない、生きていく上での義務…先生でなければ、日本の隠された事実はわからなかった…私自身もとても苦しかった…私個人の思考と自我だけで終わらせないためにも、もっと学び、もっと知り、大切な次の世代の人間にも伝えていきたい…人々の意識がしっかりとしたものに変われば、日本だけでなく世界の悲しみもいつかなくなる…私の人生の中で、この授業は大きく意味のある時間
68. 修学旅行に沖縄に行って沖縄には親近感ができたから、これからニュースとかでそういうことを取り上げられたら、気にして見てみよう
69. 戦争や公害など、今まで勉強して知ったつもりだった…半分以上他人事のように聞いていた。でも、3月の震災で、…18年間生きてきてはじめて日本の人々が自然によって殺される状況を見た…自分が体験していなかったから。リアルに感じなかった。しかし、それではだめなのだと思い知らされた。公害にしても、戦争にしても、放射能にしても、過去に一度ならず失敗してきている…公害や戦争で殺された人たちの死を無駄にしてはいけない。私たち、そして私たちの子どもたちやまたその孫、これから世界を作っていく者たちがもっとリアルに受けとめて、記憶し、語りついで、…誰も殺されない、本当に平和な未来を作っていかなきゃならない…私も未来を作っていく一員だということを忘れないようにしたい
70. 東日本大震災から学んだ放射能の実在と過去に起きた数々の戦争で学んだ兵器による放射能が全く同じ…原発は過去に起きた戦争から続いているものなんだと気づいた…水俣病とベトナムの枯葉剤による水質汚染もまた全く同じ…世界の歴史と日本の歴史が恐ろしく同じ道を歩んできた…やっぱりもっと多くを学ぶべき
71. 募金なども積極的にしたい…とりあえず調べます。学校でも何かできないか
72. 過去に起きた事件や戦争で死んでいった人達の死が無駄なものにならないように、しっかりと過去を学びたい…一人一人が歴史を変える力を持っているはず

(キ) 現地に行きたい

73. 日本史の授業のおかげで、考え方も変わり、日本を誇りに思うことができ…ビデオに出てきた国や、地域に足を運び現地でビデオで感じれなかったことに触れてみたい
74. ベトナムの枯れ葉剤の話は、ただただ戦争の存在を恨みました。生まれてくる子どもたちにまで被害が出て…みんな障害があっても目は死んでなくて、とてもキラキラしていた。困難に直面しているけど一生懸命頑張っているところにとても感動…いつかベトナムに一緒に行きたいです!!

(ク) 未来を、世界を変えたい

75. ツライ部分もたくさんありましたが、その部分を知ることにより、これからの日本を平和のままにしたい!戦争のない国でいたい…カコを見つめて、これからの未来について、考えさせてくれるような授業をしてくれてありがとう
76. こんな悲惨をもうくり返すことなく、悲しむ人たちが出ないように考えていくのは私たちに与えられた課題…同じ人なんだから手をとり合い生きていきたい
77. 私はこれからも平和に生き、これからを築く日本人として平和な日本をめざしていきたい
78. 殺すためでなく、戦うためでなく、生きるため、守るための物を生み出す未来にしたいと思う。全世界中の人々と一緒に
79. 今の私たちが学んだ日本史の授業をムダにしないためにも動きたい…明るくて、平和で、みんなが幸せでいれるような未来を作りたいって強く思います!世界を変えます!!
80. 授業を受け、放射能の恐ろしさや、情報伝達の大切さを改めて感じました。残酷なビデオを見て目を背けてはいけないのと同じように、今の現状を直視し、今自分が本当に何をやるべきなのかを見つけていきたい…政府が自分たちのいいように事を進めないためにもちゃんとした知識をつけてこれからの日本のために働いていきたい

多くの生徒が、飽きない、分かりやすい、覚えやすい、面白い、勉強になるとビデオ授業に共感している。論述テストには戸惑いと驚きとともに、将来必要な力である事を認識している。
考える授業は、どう生きるかを再確認し、何かできないかと考え、もっと学びたいと思い、自分にできる課題を見つけることになる。今の世界情勢の本質に迫り、国が隠している裏の真実が分かり、未来に勇気を与えてくれ、意見が出せる優れたビデオ教材を視聴したい。
みんなと意見を共有することが、共感と視野を広げ、学習意欲の向上につながっている。そして、もっと知りたい、知らせたい、現地に行きたい、未来と世界を変えたいという意見につながっている。

1. 「自分の意見を持てる」授業を作る7

(キ) 原爆(被害)→アジア侵略(加害)→現代(複雑)へ

1学期最初の授業は、日本史を考える上での原点とも言うべき広島・長崎への原爆投下の問題から入る。広島の被爆者が描いた「原爆の絵」や長崎の被爆者の映像を通して被害の実相をビデオで学ぶ。また、原爆投下の目的・背景などを、問答形式の授業で考える。また、「赤い背中」の写真の少年の被爆体験。そして戦後の核開発競争の問題へ入り、ビキニ事件や原水爆禁止運動、自国民をも人体実験に使ったアメリカの核開発を取り上げる。
ここまで授業をしてから戦争がなかった原始時代に戻る。階級と国・戦争の誕生、各時代の特徴的な民衆の抵抗運動や対外侵略を取り上げる。秀吉の朝鮮侵略や江戸時代の映画(郡上一揆)などのビデオを見せる。
多くの高校生がアルバイトをする夏休み直前には、アルバイトで役に立つ「働くルール」の授業をする。
近代に入って、日本の急速な資本主義化の矛盾とアジア侵略の歴史を追っていく。
現代に入って、戦後日本の変化をアメリカの世界戦略との関連で追っていく。
1年間の授業の流れは、意見を持ちやすいテーマ(日本の被害)から、重いテーマ(日本の加害)へとつないでいく。そして、現代の複雑なテーマ(被害・加害両面を持ち、価値観や生き方が問われる)に取り組む。こうした中で、歴史を立体的に理解し、自分の意見を発展させることができる。

1. 「自分の意見を持てる」授業を作る6

(カ) 自分の意見を書く問題

論述問題には、自分の意見を書く問題を必ず入れる。また、授業の感想を書く問題もある。
1年間の自分の意見を書く問題は次の通り。

原爆がもたらした悲劇と投下の目的について、次の視点から自分の意見を述べよ。
「原爆の絵」が集中しているのはどこか。その理由は何か。
アメリカが原爆の実態や事実を隠した理由は何か。それは何を生んだか。
原爆開発の当初の目的は何か。
広島に続いて長崎に投下されたのはなぜか。
日本人以外の被爆者はどこにどれだけいるか。
日本と世界で核兵器をなくす運動は、いつ何をきっかけにどのように広がったか。被爆者はどのような運動を続けているか。「非核平和の世界をつくる」(教科書P.241)ために、日本はどうすれば良いか。あなたは何ができるか。
「原爆の絵」「長崎の子」「赤い背中」「第五福竜丸」「3000万の署名」「検証!核兵器の闇」などのみんなの感想を読んで、共感した意見は何か。その理由を述べよ。
幕末から明治維新の時期に日本はどのように変わったか。次の視点から自分の意見を述べよ。
ペリー来航からわずか14年で幕府が滅亡したのはなぜか。
明治維新政府はどのような国家を作ろうとしたか。
人々は明治維新に何を期待し、どのように裏切られたか。
労働基準法などの「働く人々の権利」にはどのようなものがあるか。日本の歴史は、「働く人々の権利」を確立する視点からみると、どのように発展してきたと思うか。「働く人々の権利」を守るためにあなたは何ができますか。
南京大虐殺、三光作戦、731部隊、日本軍「慰安婦」、強制連行、毒ガス作戦などの被害者やその家族はアジア各地に今も生きている。昭和天皇をはじめ、「過去の戦争に直接責任を負うべき人々の多くは、すでに世を去った。今日に生きる世代は、日本の戦争責任とアジアに対する戦後補償の問題を、どう考えたらよいだろうか」(教科書243ページ)。あなたの意見を述べよ。
戦争、水俣病などの公害、福島第1原発事故の放射能汚染など、「今の社会が抱えている問題は、すべて過去の歴史とつながっています。私たちは、過去からは逃げることはできないし、過去を変えることもできません。しかし、過去の歴史を学ぶことによって、これからの未来をつくりだす指針を得ることができます。未来をつくる一員となることができます」(日本史のシラバスより)。あなたは過去の歴史から何を学び、どのような未来をつくる一員になりたいと思いますか。

1. 「自分の意見を持てる」授業を作る5

(オ) 論述テストに挑む

定期考査はすべて論述問題にする。論述問題が初めての生徒が多いので、事前に「まとめのプリント」で「復習のポイント」として問題の傾向を事前に知らせる。また、テストには、自筆のノート・プリント・教科書・辞書(電子辞書を含む)などの持ち込みを許可する。テストが始まってから調べ始めても間に合わないので、テスト前に「復習のポイント」を文章化しておくように指示している。

1. 「自分の意見を持てる」授業を作る4

(エ) 全員の感想を配る

ビデオや調べ学習のプリントを提出してもらい、全員の感想をパソコンで打ち込み、次の授業の最初に配る。特に注目してもらいたい意見にはアンダーラインを引く。自分が共感できる意見、自分と違う意見などを見て、認識の幅を広げることができる。学習内容の底上げとまとめにもなっている。

1. 「自分の意見を持てる」授業を作る3

(ウ) 調べ学習で学ぶ

授業で教科書や資料プリントを使った調べ学習をする。調べ学習の最後に感想を書いてもらう。
1年間の近現代史の調べ学習は次の通り。

西から昇った太陽、広島からヒロシマへ
徴兵令と地租改正を調べてみよう
大日本帝国憲法の制定を調べてみよう
選挙権と初期議会を調べてみよう
日清戦争と義和団戦争を調べてみよう
社会運動を調べてみよう
日中戦争と南京大虐殺を調べてみよう
日本人反戦同盟を調べてみよう
日本軍「慰安婦」(『フィールドワーク日本軍「慰安婦」』)
どの憲法草案を支持するか?
朝鮮戦争と再軍備を調べてみよう
サンフランシスコ条約を調べてみよう
安保闘争・ベトナム戦争・沖縄返還を調べてみよう
大石又七さんの「『死の灰』の怖さを見つめ」を読んでみよう(新聞記事より)
ベトナム戦争「米軍の介入とジェノサイド戦術」「ベトナム国民の抵抗闘争とベトナム反戦運動」(『ドキュメント戦後世界史』)

1. 「自分の意見を持てる」授業を作る2

(イ) ビデオで学ぶ

日本史の授業でビデオを見て学習する。当時の様子を再現した映画やドラマ、ドキュメンタリーなどを見る。大事なところで止めて解説したり、「視聴プリント」に記入したりしながら見る。最後に感想を書いてもらう。
自分が実際に訪問して撮ってきたビデオや写真、実物教材、アンケート結果なども見せる。広島の原爆瓦、足尾鉱毒事件の写真(亜硫酸ガスによって荒れ果てた山や精錬所跡)、水俣病資料館で調べてもらった毛髪水銀値、第五福竜丸展示館、ナヌムの家で行われた日本軍「慰安婦」被害ハルモニ孝行フェスティバル、ツーズー病院と平和村の子どもたち、ドクさんと双子の赤ちゃん、アルバイト体験アンケート結果など、関連するビデオを身近に感じてくれるように工夫する。


1年間に見た近現代史のビデオは次の通り。

(1) 原爆の絵~市民が残すヒロシマの記録~
(2) 長崎の子・映像の記憶~原子雲の下に生きて~
(3) 赤い背中~原爆を背負い続けた60年~
(4) 映画「第五福竜丸」
(5) 3000万の署名 大国を揺るがす~第五福竜丸が伝えた核の恐怖~
(6) 検証!核兵器の闇~それは人体実験だった~(ザ・スクープスペシャル)
(7) 板垣死すとも自由は死せず
(8) 映画「草の乱」
(9) ドラマ「獅子の時代」
(10) 田中正造 足尾鉱毒事件に挑む
(11) 知ってるつもり 孫基禎
(12) 人間は尊敬すべきものだ 全国水平社・差別との闘い(その時歴史が動いた)
(13) 映画「武器なき斗い」
(14) 映画「戦争と人間」第1部~第3部
(15) 裁かれなかった毒ガス作戦~アメリカはなぜ免責したのか~
(16) 証言記録 兵士たちの戦争 「北部ビルマ 密林に倒れた最強部隊」 「西ニューギニア 見捨てられた戦場」
(17) 焼け跡から生まれた憲法草案
(18) 水俣病(様々な映像を独自に編集)
(19) 映像の世紀 第9集 ベトナムの衝撃
(20) 枯れ葉剤が残したもの(ザ・スクープスペシャル)
(21) 映画「花はどこへいった ベトナム戦争のことを知っていますか」
(22) どうするアンポ 日米同盟と私たちの未来
(23) 劣化ウランの傷跡 知られざるヒバクシャ(ザ・スクープスペシャル)
(24) イラク 戦場からの告発
(25) GOBAKU アメリカは誰と戦っているのか

1. 「自分の意見を持てる」授業を作る1

(ア) 「未来をつくる学力」を(シラバスから)

日本史のシラバスの「確かな学力を身に付けるためのアドバイス」に次の文を載せている。
日本史の学習は、出来事や人名・年代を覚えることではありません。
大切なことは、歴史上の出来事がなぜ起きたのか、その出来事がその後の世の中をどう変えていったのか、歴史上の人物がどのような一生を送ったのか、当時の社会が現在とどう異なっていたのか、現在とどのような共通性があるのかを学び・考えることです。こうした学習で、自分がこれから生きていく社会で、物事をより正しく判断し、より良く生きていく上での参考にすることができます。
今の社会が抱えている問題は、すべて過去の歴史とつながっています。私たちは、過去からは逃げることはできないし、過去を変えることもできません。しかし、過去の歴史を学ぶことによって、これからの未来をつくりだす指針を得ることができます。未来をつくる一員となることができます。

「自分の意見を持てるのが嬉しい」授業 はじめに


「自分の意見を持てるのが嬉しい」授業
―ビデオ学習と論述テストで授業を変える―

はじめに

「生きてきた中で、こんなに戦争のことや、これからの日本について考えた事がありません」「僕がこのように自分の意見を持てるようになったことが嬉しい」「感想のプリントを読んで、共感したり、こんな考えもあるんだと新しい発見があって刺激を受けます。これからどのような日本であるべきか考えを持って生きたい」―日本の未来を考え、自分の意見を持ち、生きる希望を語る高校生。ビデオ学習と論述テストが「自分の意見を持てる」授業に変える。